5月も残すところあと僅かですね。 青森は桜の花も林檎の花も終わり、田植えシーズンの到来です。
初夏の陽気と新緑が素敵な季節となって来ました。 日々を悔いなく一生懸命過ごしていきたいですね!
ロータス・エリーゼ (111) がエンジンストールするとのことで入庫です。
お客様からお話を聞くと、エンジンが暖まってくるとストールするそうです。
再始動は可能だけど、再始動してもまたすぐにストールするを繰り返すこともわかりました。
このエリーゼのエンジンはローバー製の「 18K4F 」です。

まずは症状を確認するためにエンジンをかけた状態で放置します。
本当は走行テストに出たいのですが、万が一ストールから再始動不可になったら大変です (笑)
すると約1時間半ほどのアイドリングでエンジンがラフになってストールしてしまいました。
タイミング的には電動ファンが回ったタイミングで出る気がします。
何度か再始動 → ストール → 再始動を繰り返していると、電動ファンの作動には関係ないことがわかりました。
そして、ストール直前には必ず数秒ラフアイドルになってからだということもわかりました。
なんだか燃料系のトラブルみたいです。
ストール後は再始動しても5分程度で再発するので、エンジンを始動してフューエルポンプ付近で作動音の確認をします。
するとフューエルポンプの作動音が止まった瞬間にアイドリングがラフになりストールしました。
どうやらフューエルポンプが作動停止 → 残圧でエンジン駆動 (ラフアイドル) → 残圧もなくなりストールという流れのようです。
症状をきちんと確認できたので8割がたは故障診断完了です!
あとはフューエルポンプが停止する理由が、駆動電源の喪失なのかポンプ本体の不具合なのかを切り分けるだけです。
と、ここで問題発生です。
フューエルポンプのサービスホールが小さすぎてフューエルポンプの配線にアクセスできません。

と言う訳で、車両をリフトアップしてフューエルタンクを一度降ろすことにします。
って書くと簡単なんですが、実はリフトアップするのも一苦労です。

どうにかこうにかリフトアップできたので、フューエルタンクを降ろしていきます。

フューエルポンプの駆動配線にオシロスコープのプローブを取り付けて、再度フューエルタンクを元に戻します。
オシロスコープで駆動電源を観察しながら、エンジンを始動しアイドリングします。

フューエルポンプの作動音が停止しましたが、駆動電圧はかかったままです。
ちょっとわかりずらいので、今度はストールしてから波形を止めてみます。

赤丸辺りでポンプが停止して、数秒後にエンジンがストールしている様子がわかります。
これでフューエルポンプ本体の不良が確定しました。
がっ、ここでまたもや問題発生! 肝心のフューエルポンプが国内どころかイギリス本国も欠品で納期が未定です。
取引のある部品商さんに探してもらったところ、国内に社外品ですが物が見つかりました。
お客様に診断結果と部品の状況を報告して、今回は社外品で交換することに了解をいただきました。


今回は一緒にフューエルフィルターも交換することにしました。
本来ならば交換後にもう一度フューエルポンプの駆動波形を測定するのですが、タンク脱着が必要になるため割愛しました。
その代わりに症状発生の倍以上の時間でストールするかどうかの検査は行っております。
完成検査で問題がないことを確認して作業完了です。
今回もお客様には診断・検査料金がかかる旨を事前に説明させていただいて作業を行いました。
診断料金がかかるの?と極稀に聞かれますが、当社では診断・検査料金は頂戴しております。
何故なら診断・検査を行うにも時間や設備、作業者のスキルなどが必要不可欠だからです。
当然のことながらこれらには全て経費がかかっています。
例えば、診断・検査を行わずに診断・検査料金を頂戴したとすればボッタクリと言われても仕方ないかもしれません。
でも、作業の対価として正当であれば全く問題ないと思っております。
あとはお客様が対価として適当だったかどうかをご自身で判断していただければ良いかと思います。
私どもは八百屋さんと同じように値段をつけて商品を並べていますので、良いと思っていただけたらお買い上げください。
その値段は適当に付けたものではなく、今までの経験や自社の設備、作業の方法などから自信をもって値付けをしております。
不明な点がありましたらお問い合わせいただけたらと思います。 きちんと説明させていただきます。
インターネットの普及した昨今ですので、極稀に他社の仕事の方法を揶揄するような発言も見受けられます。
どうか上辺だけで判断することのないようにお願いいたします。 言葉にしてしまえば同じでも中身は違って当然です。
自分と異なる考え方を一刀両断で否定するのは違うと思いますし、個々の考え方は尊重すべきだと思います。
様々な選択肢の中からお客様が気に入ったもの、納得できたものをお買い上げいただけば良いと思います。
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- 2022/05/23(月) 16:12:06|
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各地で桜が散り始めた話も聞きますが、こちら青森ではやっと蕾が膨らみ始めた状況です。
日に日に暖かくなってきて、穏やかな日々が続いております。
全国的に有名な弘前公園の桜ですが、今年は感染対策を行って「 桜まつり 」が開催される見通しです。
ピークはゴールデンウイーク前になりそうですが、興味がある方はぜひお越しください!
メルセデスベンツ・ゲレンデヴァーゲン (W463) のエンジン警告灯が点灯したとのことで入庫です。

早速エンジンのフォルトコードを呼び出してみると、「 P2003 : エアインテークの機能異常 」がストアされていました。

MIL ON & Stored & Current なので、警告灯点灯 & 保存済み & 現在故障 って感じですね。
エアインテークシステムですが、国産車ではほとんど見ることがなくなった二次空気導入装置のことです。
欧州車だとエアインジェクションシステムとも呼ばれたりしてますね。
簡単に説明すると、燃焼室に近いエキゾーストポートやマニホールドに酸素を送って未燃焼のHCを再燃焼させています。
最近だと一次排ガス対策装置と言うより、触媒の効率アップのための二次排ガス対策的要素が強くなっているかと思います。
欧州車はエアインジェクションシステムが採用されている車がまだまだ多くあります。
システム概要としては、空気がインジェクションポンプ (電子制御) → シャットオフバルブ (負圧制御) → エキゾースト へ
この時の負圧制御は二次エアソレノイドバルブ (電子制御) → シャットオフバルブ になります。
各々を検査していきます。
まずはエアポンプと二次エアソレノイドバルブの駆動信号をオシロスコープで確認します。


OFF → ON 、ON → OFF とエンジンECUからは駆動信号が正常に出力されています。
続いてエアポンプからシャットオフバルブまでの配管からのリークをスモークテスターで検査します。

配管にリークは見受けられませんでした。
次は二次エアソレノイドバルブからシャットオフバルブへの制御負圧の点検を行います。
https://youtu.be/id71qRcjRNE二次エアソレノイドバルブのON/OFFに合わせてシャットオフバルブへの負圧も切り替わっていることが確認できました。
今度はマイティバッグでシャットオフバルブに負圧をかけた時に、シャットオフバルブが正常に作動するかを検査します。

シャットオフバルブの作動もOKです。
先程のシステム概要にある構成部品のほとんどが正常に作動しています。
じゃあ、何が悪いんでしょう? 実は肝心要のエアポンプが回転していません(笑)

抵抗を測定してみると118kΩもありました。 これじゃ回れないですよね!
エアポンプが悪いならほかのところは診なくてもいいんじゃない? そんな疑問もあるかもしれませんがそれは後程。
お客様に点検結果と修理のお見積りをお伝えして、修理作業にかかります。
新品のエアポンプは抵抗が約22Ωでした。 (キロではないただのΩなので交換前の約1/5000です)

エアポンプリレーは同時交換なので、エアポンプと一緒に交換しました。
交換前はアクティブテストでエアインジェクションシステムを作動させても正常作動しませんでしたが、交換後は正常となりました。
https://youtu.be/NurTUMUyLJ8何日か他の整備をしながらエンジン始動を試みていましたが、フォルトがストアされることも警告灯が点灯することもありません。
症状が完治したことが確認できたので作業完了です。
悪いところがわかっても、なぜシステム自体を検査するのか疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。
でも、エアポンプが悪いからと言って他のところが大丈夫だと言う確証はありません。
今回はエアポンプの不具合でしたが、もしもその影響でシャットオフバルブが破損していたらどうでしょう?
お客様にエアポンプ交換のお見積りを出して、やっぱりシャットオフバルブもダメでしたとなったらどう思うでしょうか?
実際シャットオフバルブも湿気の影響か、かなりの付着物が堆積していました。

もちろん今回はきれいに清掃して組み付けてあります。

物によっては先に交換や修理をしてからではないと判断できないことも多々あります。
でも、整備する側の勝手な先入観で、これがダメだからあとは大丈夫と言い切ってよいことにはならないと思います。
ろくに検査もせずに、経験や勘での交換なんかは論外です。
人の体と同じで、システム全体を診て総合的な判断が必要なのではないでしょうか?
当社はそのように考えているので、システム全体を診させていただいております。
「 対価 」として診断料や検査料は頂戴しますが、それでよろしければ是非お問い合わせください。
- 2022/04/11(月) 20:17:06|
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年末年始の大雪もあり、新年早々からバタバタと慌ただしい日々を送っていました。
本当なら最低でも月一回はブログを更新しようと思っていたのですが、二月近く放置になってしまいました・・・
皆様のおかげで忙しい毎日を送らせていただいております。 かなりお時間を頂戴することにもなりますが、どうぞご了承ください。
BMWミニ・クラブマン (F54) がエンジン警告灯が点灯したとのことで緊急入庫です。

早速フォルトコードを調べてみると、以下のようなフォルトがストアされていました。
「 118401 : 混合気が薄過ぎる、偏差が大きすぎる 」 、 「 11801 : 混合気が薄過ぎる 」
どうやら空燃比系統のエラーのようですが、若干エンジン回転数が高いものの気になるほどのエンジン不調はありません。
空燃比系統の関連データに絞って走行テストを行いながらライブデータを解析していきます。

確かに空燃比が薄いようです。
ただ、エンジンをリスタートさせると何事もなかったように正常な状態に戻ります。

ちょっと不思議ですよね (笑)
原因として考えられる箇所をいろいろ検査していくと、気になる箇所が見つかりました。
それがここ、タンクベントバルブです。

オシロスコープで駆動波形を取ってみると、どうやらコンピューターからの指示は問題なく出ているようですがちょっと気になります。

タンクベントバルブ本体を点検すると、非通電時の回路閉状態でも閉じていません。 タンクベントバルブの不良が確定しました。
お客様にわかりやすく説明するためにも、スモークテスターを使って新品との違いをテストしてみます。
https://youtu.be/UGkHPrWzZDU不良品 (黄色いテープ) は回路が開いていて、新品良品は回路が閉じているのがよくわかります。
気になっていたオシロスコープでの駆動波形も全く問題ないものになりました。

タンクベントバルブの交換作業を終え、完成検査の走行テストを行います。

かなり長いこと走行テストを行いましたが、ドライバビリティはもちろんライブデータにも問題ないようです。
お客様には今後の経過観察が必要な旨を説明して作業完了となりました。
結果としてはタンクベントバルブの不具合で間違いなかったと思います。
ここまでやらなきゃいけないの? ネットに同じ症例があるのでとりあえず交換したら? そんな話もたまに耳にします。
ここからは私の持論なので、合う方と合わない方がいらっしゃると思います。
それはそれで「 あり 」だと思いますので、合わなければお客様の合う整備工場を選んでいただけたら良いと思います。
例えば具合が悪くて病院へ行った時に、診察もせずに出された薬を飲みますか?
診察結果の詳細な説明も無しに、とりあえず手術してみましょうと言われたらどう思いますか?
ネットで症状を調べたら同じ症状みたいなものがあったので、あなたの病気は○○ですと言われたらどう思いますか?
自動車整備も同じではないでしょうか?
当社ではきちんと診させていただいたうえで、お客様に納得していただける整備や情報をお届けしたいと思っています。
ですから詳細なデータも取るし、お客様にわかっていただけやすい動画や写真も撮ります。
決してブログに載せるためではありません。 (笑)
もちろん、そのために必要な日々の学習や情報収集も怠りませんし、ネットワークも作って相応の努力はしているつもりです。
診断料や検査料は対価としての適正料金で頂戴いたしますが、合うと思った方は是非お問い合せください!
- 2022/03/03(木) 15:34:58|
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旧年中は皆様方には大変お世話になりました。
本年も今までと変わることなく、「 ひと手間を惜しまない 」ことを大切にしてまいります。
整備の「 プロ 」としての矜持を持ち、お客様にとって唯一無二の整備工場になれますよう頑張っていく所存です。
お客様には入庫や整備にお時間を頂戴することが多々あると思いますが、ご了承いただきますようにお願いいたします。
本年も皆様方の変わらぬご愛顧をよろしくお願いいたします。

2022年 元旦
有限会社 須藤ヂャイアント商会
代表取締役 須藤正樹
- 2022/01/01(土) 20:50:02|
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今年も残すところあと僅か、残り2週間です。 年を取ったせいか滅茶苦茶時間経過が早いです(笑)
今シーズンはまだそんなに雪が降らないので、日々の生活は楽です。
ボチボチ年内の作業のご予約が難しくなって、年越しをする車も出てきました。 残り2週間も頑張って仕事をしていきます!
今回の記事はいつもと趣向を変えて、整備事例ではなく「 オシロスコープ 」の便利な使い方についてです。
個人的には故障診断には「 オシロスコープ 」は欠かせないと思っています。
電圧の変化を診るだけではなく、こんな感じで見えない「 音 」も診ることができます。

最近のエンジンの補機ベルトはサーペンタインベルトと言って、1本のベルトで複数の補機類を駆動していることが多いです。
エンジンから異音が出ている時にベルトを外すことで、エンジン本体からなのか補機類からなのかの切り分けは可能です。
ただサーペンタインベルトだと、どの補機類から異音が出ていたのかは分からなくなってしまいます。
結果として誤診で悪くないものを交換してしまう可能性も否めません。
そんな時は廃車から拝借したある部品とオシロスコープで、異音を「 見える化 」しちゃいます!
https://youtu.be/TOnM1hjFr-sねっ、ちゃんと音の「 見える化 」ができていますよね!?
ちなみに、この動画のとトップの画像の波形はウォーターポンプの音をオシロスコープで診ています。
その他の波形は↓のような波形でした。 (電圧と時間は全て同じレンジです)
オルタネーター

アイドルプーリー

テンショナー

こうして比べてみると異音の原因がはっきりわかりますね! 今回の異音の原因はウォーターポンプです。
ここまでするとお客様に自信をもって整備のご提案ができますし、交換したけれど直らなかったと言ったこともほぼなくなります。
私達整備士はプロとしての技術をお客様に買っていただいてます。
お客様に満足して技術を買っていただくためには、「 ひと手間を惜しまない 」ことが大事ですね!
- 2021/12/16(木) 21:28:01|
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